最終的に荷重が0になってしまう異常
次の3式を前提に考えてみる。
-1 ≦ Wij ≦ 1 ・・・(1)
n | |||||||
Waa|a | = | η | ∑ | [f(Wai|a) | ・ | g(Wia|a)] | ・・・(2) |
i=1 |
n | |||||||
Wab|a | = | η | ∑ | [f(Wai|a) | ・ | g(Wib|a)] | ・・・(3) |
i=1 |
例えば式(3)で「n=1」の場合は三者だけの関係を表す式であり、次の式(4)のように書き換えた方が分かりやすい。
Wab|a = η・f(Wac|a)・g(Wcb|a) ・・・(4)
ηがどのような値で、f(Wac|a)やg(Wcb|a)がどのような関数かはまだ分からない。分からないが式(4)で荷重 Wab|a を求めるときに気になることがある。それは以下のように「1以下の正の数に1以下の正の数を掛けると元の数よりも小さくなる」ということである。
「0 ≦ Wac|a ≦ 1」で「0 ≦ f(Wac|a) ≦ 1」 ・・・(5)
「0 ≦ Wcb|a ≦ 1」で「0 ≦ g(Wcb|a) ≦ 1」 ・・・(6)
「(5)かつ(6)」ならば「0 ≦ f(Wac|a)・g(Wcb|a) ≦ f(Wac|a)」 ・・・(7)
「(5)かつ(6)」ならば「0 ≦ f(Wac|a)・g(Wcb|a) ≦ g(Wcb|a)」 ・・・(8)
「η≦1」ならば(7)(8)は次のようになる。
「(5)かつ(6)」ならば「0 ≦ Wab|a ≦ f(Wac|a)」 ・・・(9)
「(5)かつ(6)」ならば「0 ≦ Wab|a ≦ g(Wcb|a)」 ・・・(10)
ここで、もしも「f(Wac|a) ≦ Wac|a」「g(Wcb|a) ≦ Wcb|a」ならば(9)(10)は次のようになる。
「(5)かつ(6)」ならば「0 ≦ Wab|a ≦ Wac|a」 ・・・(11)
「(5)かつ(6)」ならば「0 ≦ Wab|a ≦ Wcb|a」 ・・・(12)
「f(Wac|a) > Wac|a」「g(Wcb|a) > Wcb|a」であっても(11)(12)は起こりやすい。
f(Wac|a)・g(Wcb|a) = 0.2×0.4 = 0.08
Wab|a = η・f(Wac|a)・g(Wcb|a) = 0.08
∴ 0 ≦ Wab|a ≦ Wac|a,0 ≦ Wab|a ≦ Wcb|a
(11)は「 c のことが好きだから c が好いている b のことも好きになったが、b への好意は c への好意よりも強くなることはない」ということで、(12)は「 c のことが好きだから c が好いている b のことも好きになったが、b への好意は c の b への好意よりも強くなることはない」ということだろう。b に「音楽」を当てはめると「あなたが音楽を好きだから私も音楽が好きになったけれど、私はあなたほど音楽を愛せないし、私は音楽よりもあなたの方が好き」ということだろう。「私」が「あなた」よりも「音楽」を好きになるには「あなた」や「音楽」との三者関係だけでは無理で、他の人との関係で「音楽」への好意を加算しなければいけないということだろう。
このように書くともっともらしいのだが、次の式(13)を加えると単純に考えられそうにない。
Wac|a = η・f(Wab|a)・g(Wbc|a) ・・・(13)
式(4)から(11)(12)に至ったように、次の(5’)(6’)を前提にすると、式(13)から次の(14)(15)が得られる。
「0 ≦ Wab|a ≦ 1」で「0 ≦ f(Wab|a) ≦ 1」 ・・・(5’)
「0 ≦ Wbc|a ≦ 1」で「0 ≦ g(Wbc|a) ≦ 1」 ・・・(6’)
「(5’)かつ(6’)」ならば「0 ≦ Wac|a ≦ Wab|a」 ・・・(14)
「(5’)かつ(6’)」ならば「0 ≦ Wac|a ≦ Wbc|a」 ・・・(15)
f(Wab|a)・g(Wbc|a) = 0.16×0.4 = 0.064
Wac|a = η・f(Wab|a)・g(Wbc|a) = 0.064
∴ 0 ≦ Wac|a ≦ Wab|a,0 ≦ Wac|a ≦ Wbc|a
f(Wac|a)・g(Wcb|a) = 0.128×0.4 = 0.0512
Wab|a = η・f(Wac|a)・g(Wcb|a) = 0.0512
∴ 0 ≦ Wab|a ≦ Wac|a,0 ≦ Wab|a ≦ Wcb|a
(11)と(14)がほぼ矛盾してしまう。矛盾しないのは「Wab|a = Wac|a」になったときだけである。時間軸を用意し、(11)と(14)を交互に繰り返すと、最終的に「Wab|a = Wac|a = 0」になってしまう。これをどのように解釈したら良いのだろうか。「-1 ≦ Wac|a ≦ 0」「-1 ≦ Wcb|a ≦ 0」「-1 ≦ Wab|a ≦ 0」「-1 ≦ Wbc|a ≦ 0」の場合は、さらに異常な結論が得られそうである。
【バランス理論の数式表現】の終わりの方にも書いたが、荷重を求める数式に利用する関数 f(x) や g(x) を選択する際には、異常な結論が得られないように注意が必要である。実際に数値を当てはめてシミュレーションしたら、異常な解釈しかできない結果になってないか、また、当てはめる数値を多様にしたら異常な結果が得られないか、慎重に検討する必要がある。
追記:
(5)(6)(5’)(6’)の「で」の前は不要かもしれないが、関数 f(x) や g(x) が1以下になりやすく、異常が起こりやすいということで…。
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