素人が専門家に頼る構図
専門知識のない素人は専門家が良いと言ったものは良いと思い、悪いと言ったものは悪いと思いやすい。そんな心理もハイダーのバランス理論を使って説明できる。
図1
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図2
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図3
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
素人が専門家を信頼していて専門家がある評価対象を肯定的に評価している状態は図1のようになる。素人は c についての知識がないので評価できない。しかし、信頼している専門家が c を肯定的に評価していることで、図2のように専門家と同じように c を肯定的に評価する。図3のように信頼している専門家が肯定しているものを否定するとバランスが悪くストレスになる。
例えば、医学知識のない患者は信頼している医師が良いと判断した治療法を良い治療法であると思う。例えば、裁判で法律の知識がない依頼人は信頼している弁護士が良いと判断した弁護方針を良い方針だと思う。例えば、株の売買で自信のない素人はどこかの専門機関の格付けを信用して高い格付けの株を買う。例えば、初めての子育てで自信のない母親は本などに書かれた育児方法を真似して子育てをする。例えば、ファッションセンスに自信のない素人はファッション雑誌で紹介されている流行の服を着る。例えば、恋愛に自信のない素人は雑誌などに載っている専門家のノウハウに従って行動する。判断に迷っている人が有名な占い師の助言に従って行動するのも、同じだろう。
自分で判断できない場合、信用できそうな専門家に頼る行為は図2のようにバランスが良く、信頼している専門家に逆らう行為は図3のようにバランスが悪い。
図1~図3は信頼している専門家が評価対象を肯定的に評価している場合のバランスであるが、評価対象を否定的に評価している場合は図4~図6のようになる。
図4
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図5
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図6
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図5のように専門家と同じように c を評価すればバランスが良いが、図6のように専門家と異なる評価をするとバランスが悪くなる。
例えば、株の売買で自信のない素人は専門家が「株価は暴落する」と判断したら同じように「暴落する」と判断して投げ売りや空売りをした方がバランスが良い(図5)。専門家に逆らって「上がる」と判断して買ったら図6のようにバランスが悪い。例えば、初めて子育てをする母親が、専門家の書いた本などで否定しているような子育てをすると図6のようにバランスが悪く不安になる。
さて、素人が専門家を信用できなくなると、専門家と同じ判断をするとバランスが悪くなる。
図7
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図8
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図7も図8もバランスが悪い。
専門家を信頼できなくなった素人は図9、図10のように専門家と異なる判断をすればバランスが良くなる。
図9
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図10
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
信頼されないと専門家も素人を否定的に評価する。専門家にとってバランスの良い状態は図11、図12である。
図11
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
図12
a:素人 b:専門家 c:評価対象 |
例えば、医師が良いと判断した治療法を患者など素人が批判すると、医師は素人を批判する(図11)。患者など素人の方も医師を信頼できなくなっているので、図9のように医師がその治療法を肯定すればするほどその治療法に疑問が湧くし、自分が信用できなくなった治療法を医師が肯定すればするほど医師に対する不信も増す。そして、図13のように治療法を巡って医師と対立することになる。
図13
a:患者など素人 b:医師 c:治療法 |
図14
a:患者など素人 b:医師 c:治療法 |
図14のように患者と医師の間に信頼関係があれば医師の治療法を患者も肯定するようになる。
以上のように、自分では良いか悪いか判断できない素人は専門家の判断に頼る。その際に、その専門家を信頼していれば専門家と同じ判断をし、その専門家を信頼できなくなったら専門家と異なる判断をする。さらに、自分が疑問視していることに対して肯定的に評価する専門家に対しては不信が生じる。専門家と素人の意見が一致するには専門家と素人の間に信頼関係が必要である。
コメント 0