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上手な営業の構図

 他人に自社の製品を売ろうとする営業行為では、自分のことを相手に好きになってもらえるように努力した方が良い。その理由もハイダーのバランス理論を使って説明できる。

 好きな人が好きなものは好きになり、好きな人が嫌いなものは嫌いになる。嫌いな人が好きなものは嫌いになり、嫌いな人が嫌いなものは好きになる。ハイダーのバランス理論で説明されるこの心理は相手の立場でも同じであり、相手の立場でバランス理論を考える(参照)。

図1 図2 図3
図1
a:販売員
b:客
c:商品
図2
a:販売員
b:客
c:商品
図3
a:販売員
b:客
c:商品

 まずは、販売員 a が売りたい自社の商品 c を好き(Wac|a > 0)になる必要がある。自分が好きにならなくても客 b が「a は c が好きだな」と思ってくれる(Wac|b > 0)だけでも良いのだが、自分が好きになった方が「a は c が好きだな」と思ってもらいやすい。そして、好意の返報性(図2)を期待して客に好意(Wab|a > 0)を示す(図1)。客が販売員のことを好き(Wba|b > 0)になり、販売員が売ろうとしている商品にプラスの評価をしていることを知る(Wac|b > 0)と、バランス理論により、客もその商品にプラスの評価(Wbc|b > 0)をする(図3)。

 以上が上手な営業の構図である。

 もしも、販売員が客に嫌われれば(Wba|b < 0)、バランス理論により、客は販売員が勧める商品にマイナスの評価(Wbc|b < 0)をする(図4)。販売員が客に好かれても(Wba|b > 0)、販売員が売ろうとしている商品にプラスの評価をしていないことが伝わると、マイナスの評価をしていると思われる(Wac|b < 0)と、やはり、客は販売員が勧める商品にマイナスの評価(Wbc|b < 0)をする(図5)。だから、販売員は売ろうとしている商品を好きになる必要がある。客にそのことが伝わるくらい好きになる必要がある。

図4 図5 図6
図4
a:販売員
b:客
c:商品
図5
a:販売員
b:客
c:商品
図6
a:販売員
b:客
c:商品

 では、販売員が客に嫌われて(Wba|b < 0)、売ろうとしている商品にマイナスの評価をしていることが伝われば(Wac|b < 0)、バランス理論によって客は商品にプラスの評価(Wbc|b > 0)をしてくれる(図6)だろうか。そのようなこともあるかもしれないが、そんなに簡単ではない。
 それは次のように考える。

図7 図8 図9
図7
a:販売員
b:客
c:会社
図8
a:会社
b:客
c:商品
図9
a:販売員と会社
b:客
c:商品

 まずは図7である。図6までと a、b、c の三者が変わっているので注意してもらいたい。
 販売員 a は会社 c に所属しているので、その会社にプラスの評価をしているとみなされる(Wac|b > 0)。客は販売員のことが嫌い(Wba|b < 0)になったので、その販売員が所属する会社も嫌い(Wbc|b < 0)になる。
 次に、図8に移る。図7と a、b、c の三者が変わっているので注意してもらいたい。
 商品 c は会社 a の商品なので、会社は自社の商品にプラスの評価をしているとみなされる(Wac|b > 0)。客は、図7により、その商品を売る会社のことが嫌い(Wba|b < 0)になったので、その商品のことも嫌い(Wbc|b < 0)になる。
 図9のように、客は、その商品を売る販売員とその販売員の所属する会社を一体と見て嫌う(Wba|b < 0)のである。そして、その会社の商品も嫌う(Wbc|b < 0)のである。
 残念ながら、図6のように販売員が客に嫌われて(Wba|b < 0)売ろうとしている商品にマイナスの評価をしていることが伝わっても(Wac|b < 0)、客は商品にプラスの評価(Wbc|b > 0)をしてくれそうにない。

 販売員と会社を一体とみなさなくても、荷重の大きさを考慮して分析すれば図6のようにならないことが説明できるはずだが、すなわち、図6と図8の両方のバランスが存在して商品に対する評価が矛盾した場合にどちらを選択するかを、荷重の大きさを考慮すれば説明できるはずだが、荷重の大きさを考慮する考察は後で行うことにしているので、ここでは省略する。


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カテゴリー:疑似ソシオン理論

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