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好意の返報性、悪意の返報性

 自分のことを好きな人を好きになることはできるが、自分のことを嫌っている人を好きになるのは難しい。自分のことを愛してくれる人のことは愛しやすいが、自分のことを憎んでいる人のことを愛するのは難しい。お中元やお歳暮をもらうと自分もお中元やお歳暮を贈らないといけないような気になる。プレゼントをもらうとプレゼントを返さないといけないような気になる。親切にしてもらうと自分も相手に親切にしたくなる。「好意の返報性」とか「互恵性」とか呼ばれる有名な心理である。

好意の返報性

 a が b に好意を示す(ΔWab > 0)と b は a に好意を返す(ΔWba > 0)傾向がある。ただし、b が a から好意を受け取ったと思わない(ΔWab|b ≦ 0)と b は a に好意を返そうとは思わない(ΔWba|b ≦ 0)。a から好意を受け取ったと b が思う(ΔWab|b > 0)と、b は a に好意を返そうと思う(ΔWba|b > 0)だろう。
 式で表すと次のようになると思われる。

 ΔWba|b = ΔWab|b  ……(1)
 ΔWab|a = ΔWba|a  ……(2)

 「=」としたのは、通常は受け取った好意以上の好意を返そうとは思わないだろうし、受け取った好意以下の好意で済まそうともしないと考えられるからである。「ΔWab|a < ΔWba|a」だと a は b に申し訳ないような気になるだろうし、「ΔWab|a > ΔWba|a」では a は損をした気になるだろう。だから a はできるだけ「ΔWab|a = ΔWba|a」となるようにするだろう。相手の好意と同程度の好意を返す。ギブアンドテイクである。
 ただし、「ΔWab|b = ΔWab|a」とは限らないから注意が必要である。a が b に喜ぶと思って贈ったプレゼントが、b にとっては嬉しくないものかもしれない。

 この「好意の返報性」は恋愛のテクニックやセールスのテクニックとして紹介されることがあり、成立しやすいことが知られているようだが、成立しない場合もあるらしい。
 考えられる理由の一つは好意を返そうとしても貧乏だったりして好意を返せないケースである。また、好意を受け取っても好意と感じなければ好意を返そうとしないだろう。好意を受け取ったと感じても好意を返さないケースもあるかもしれない。
 「好意の返報性」が成立しない理由については、しばらく後に考察するつもりである。

 「好意の返報性」があるのなら「悪意の返報性」もありそうである。

悪意の返報性

 嫌なことをされたらやり返す。嫌われたら嫌う。憎まれたら憎み返す。殴られたら殴り返す。悪口を言われたら悪口を返す。そんなこともありそうである。上の式(1)(2)は両辺の荷重が負の数でも成立する。
 しかし、「悪意の返報性」は成立しないことが多いような気もする。「汝の敵を愛せ」ではないが、嫌なことをされてもやり返さない人が多いような気がするし、悪口を言われても言い返さない人が多いような気がする。幼い頃の喧嘩では嫌なことをされたりやり返すし、悪口を言われたら言い返すかもしれないが、大人になると、じっと我慢していることが多いような気がする。
 「悪意の返報性」が成立しない理由についても、しばらく後に考察する予定である。

 「好意の返報性」に戻る。
 「好意の返報性」の解説では一般に「好かれると好きになる」のように自分の感情が影響される心理として書かれている。しかし、私が読んだ「対人心理学トピックス100」という本の旧版には「対人間つりあい仮説」を解説した「似合いのカップル」の項に『自分が好きになった場合、相手からも同様に好いてもらいたいと思う。自分が相手を好きな場合、相手も同様に好いてくれていないと気がすまないし、気が休まらない。このような傾向を心理学では好意の返報性あるいは互恵性と呼んでいる。』と書いてあり、相手の感情に対する期待として解説されている。どちらが正しいかについては気にしないことにして、相手の感情(自分に対する評価)の予想や期待については、すなわち、自分からではなく他者からの荷重の予想や期待については、しばらく後に考察したいと思う。


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カテゴリー:疑似ソシオン理論

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