ハイダーのバランス理論
ここではハイダーのバランス理論(認知的均衡理論、認知的バランス理論)についてソシオン理論の表記法で表現する。
ハイダーのバランス理論については別のブログで書いた。簡単にまとめると、次のようになる。
・aさん、bさん、第三者(c=人、モノ、コト)について考える。
・aからbに対する感情(a→b)が好意なら「+」、嫌悪なら「-」とする。
・aからcに対する感情(a→c)が好意なら「+」、嫌悪なら「-」とする。
・bからcに対する感情(b→c)が好意なら「+」、嫌悪なら「-」とする。
aさんにとって、
・(a→b)と(a→c)と(b→c)の積が「+」ならバランスの良い安定した状態。
・(a→b)と(a→c)と(b→c)の積が「-」ならバランスの悪い不安定な状態。
aさんはバランスの悪い不安定な状態ではストレスを感じるので、バランスの良い安定な状態に変えようと感情を変えたり行動したりする。
例えば、自分の恋人が自分の嫌いな歌を好きな場合、自分もその歌を好きになるか、恋人がその歌を嫌いになるように行動する。自分の恋人が自分の好きな歌を嫌いな場合、自分もその歌を嫌いになるか、恋人がその歌を好きになるように行動する。場合によっては、恋人とは趣味が合わないとして別れることを選択する。
ハイダーのバランス理論は人間関係を考察する際の基本となる理論である。三者関係の理論ではあるが、三者関係が基本となって人間関係のネットワークが広がるので、部分的な三者関係を考察することが必要になる。例えば、一部のバランスの悪い三者関係がバランス良く変わったり、一部のバランスの良い三者関係がバランス悪く変わったりすると、他の三者関係のバランスも変化する。全体としてバランスが保たれているように見えても、一部の三者関係のバランスが悪い状態だと、その三者関係のバランスをきっかけに全体のバランスが崩れることもある。
このバランス理論は、ソシオン理論の表記と相性が良い。しばらく後に考察する予定だが、荷重の大きさの差を考慮することでバランスの変化の流れを予想することができるかもしれない。
それでは、ハイダーのバランス理論がソシオン理論の表記ではどうなるか、以下に述べる。
ソシオン理論での三者関係を図示すると例えば図1のようになる。
図1 |
図1の中から、a にとってのバランスを判断するために必要な荷重だけを抽出すると図2のようになる。b と c の立場を変えると図3のようになり、b と c との間に好意の返報性が成立するとしたら図4のようになる。
図2 | 図3 | 図4 |
同様に、b にとってのバランスを判断するために必要な荷重だけを図1の中から抽出すると、図5、図6、図7のようになる。
図5 | 図6 | 図7 |
同じく、c にとってのバランスを判断するために必要な荷重だけを図1の中から抽出すると、図8、図9、図10のようになる。
図8 | 図9 | 図10 |
では、図2を基本にして a にとってのバランスを表す8種類(荷重の符号の違いで8種類ある)を一覧表にする。
図番号 | ソシオン | 荷重 | 荷重の積 (バランス) |
---|---|---|---|
図11 | Wab > 0 Wac > 0 Wbc > 0 |
+ (良い) |
|
図12 | Wab > 0 Wac < 0 Wbc < 0 |
+ (良い) |
|
図13 | Wab < 0 Wac > 0 Wbc < 0 |
+ (良い) |
|
図14 | Wab < 0 Wac < 0 Wbc > 0 |
+ (良い) |
|
図15 | Wab < 0 Wac < 0 Wbc < 0 |
- (悪い) |
|
図16 | Wab < 0 Wac > 0 Wbc > 0 |
- (悪い) |
|
図17 | Wab > 0 Wac < 0 Wbc > 0 |
- (悪い) |
|
図18 | Wab > 0 Wac > 0 Wbc < 0 |
- (悪い) |
図11~図14が三つの荷重の積がプラス(+)になるバランスの良い状態で、図15~図18は三つの荷重の積がマイナス(-)になるバランスの悪い状態である。
b や c にとってのバランスも同様に図示できる。
自分以外の両者( a にとっての b と c、b にとっての a と c、c にとっての a と b )に好意の返報性や悪意の返報性が成立するとして、a、b、c それぞれにとってのバランスを図示すると次のようになる。
a にとって | b にとって | c にとって |
---|---|---|
図19 図20 図21 図22 図23 図24 図25 図26 |
図27 図28 図29 図30 図31 図32 図33 図34 |
図35 図36 図37 図38 図39 図40 図41 図42 |
バランスが良いのは、a、b、c それぞれ上の4ケースであり、バランスが悪いのは下の4ケースである。
三者全てに好意の返報性や悪意の返報性があるとして、a、b、c それぞれにとってのバランスを図示すると次のようになる。
a にとって | b にとって | c にとって |
---|---|---|
図43 図44 図45 図46 図47 図48 図49 図50 |
図51 図52 図53 図54 図55 図56 図57 図58 |
図59 図60 図61 図62 図63 図64 図65 図66 |
バランスが良いのは、a、b、c それぞれ上の4ケースであり、バランスが悪いのは下の4ケースであるが、図は全部で8種類しかないことが分かる。a にとってバランスの良い状態は、b にとっても c にとってもバランスの良い状態であることが分かる。
人間関係を考察する際は、「仲が良い」「仲が悪い」のように好意の返報性や悪意の返報性が成立していることを仮定することが多い。その場合は、図43~図50だけを使って考察することになる。
以上、ハイダーのバランス理論について、ソシオン理論の表記で表現した。
今回は無視したが、ソシオン理論では他者だけでなく自分自身に対する荷重(Waa、Wbb、Wcc)も考慮する。この自分自身に対する荷重の符号や大きさを考慮しつつハイダーのバランス理論を使って考察すると、バランスに応じて行動を選択する際の葛藤や自信の強さなどが見えてくると思われる。それは後に考察する予定である。
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