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助けてくれなかった第3者を嫌いになる構図

 彼は学校で苛められていて反撃した時に相手に怪我をさせた。父は自分のことを理解してくれて守ってくれると彼は思ったけれど、父に叱られて怪我をさせた相手の家に連れて行かれ無理矢理謝らされた。彼は父は自分を愛してくれてないと思い、父のことを嫌いになった。
 彼女は父親に虐待されていたが母親は見て見ぬ振りで彼女を助けなかった。だから彼女は母親のことを嫌いになった。
 彼は苛められていた。同級生が助けてくれると思った。同僚が助けてくれると思った。親友が助けてくれると思った。先生が助けてくれると思った。上司が助けてくれると思った。学校が助けてくれると思った。会社が助けてくれると思った。○○が助けてくれると思った。でも助けてくれなかった。だから助けてくれなかった○○を嫌いになった。
 彼は困っていた。近所の人が助けてくれると思った。福祉施設が助けてくれると思った。行政機関が助けてくれると思った。社会が助けてくれると思った。○○が助けてくれると思った。でも助けてくれなかった。だから助けてくれなかった○○を嫌いになった。
 そんな構図をハイダーのバランス理論を使って考察する。

段階 a の心の中
Wij|a
(i,jはa,b,c)
a の思う
c の心の中
Wij|c|a
(i,jはa,b,c)
実際の
c の心の中
Wij|c
(i,jはa,b,c)
図1
図1
図2
図2
図3
図3
図4
図4
図5
図5
図6
図6
図7
図7
同上
図8
図8
図9
図9
同上
図10
図10

 a は b から攻撃されていて(ΔWba|a < 0)b が嫌い(Wab|a < 0)だったが、c のことは好きで(Wac|a > 0)c から大切にされている(Wca|a > 0)と思っていた(図1)。だから、c は b を攻撃して(ΔWcb|c|a < 0)自分 a を守ってくれる(ΔWca|c|a > 0)と期待していた(図2)。c も a のことは大切に思っていて(Wca|c > 0)b のことを心の中で非難(Wcb|c < 0)していた(図3)。

 しかし、a には c が b を非難しているように見えず、自分 a を守ってくれているようにも見えなかった。だから c の心の中について図6のようなイメージを仮定した。c は b のことを支持していて(Wcb|c|a > 0)自分 a のことが嫌い(Wca|c|a < 0)なのではないかと思った。
 すると a のイメージしているバランスは図4のようになる。c との関係で好意の返報性が成り立たない(Wac|a > 0、Wca|a < 0)だけでなく、ハイダーのバランス理論の観点でも不安定な状態(Wac|a > 0、Wab|a < 0、Wcb|a > 0)である。
 あるいは、a は c について、図7のように b とぐるになって(Wcb|c|a > 0、Wbc|c|a > 0)自分 a を攻撃する(ΔWca|c|a < 0)つもりではないかと思うかもしれない。この場合、a のイメージしているバランスは図5のようになる。

 a は図4や図5のバランスの崩れた状態を図8、図9のように修正する。好きだった c のことを嫌いになる(Wac|a < 0)。これで返報性の観点(Wac|a < 0、Wca|a < 0)でもバランス理論の観点(Wac|a < 0、Wab|a < 0、Wcb|a > 0)でも安定した状態になる。

 a のイメージが図8、図9の変更された時、a の c への態度は悪くなり(ΔWac < 0)、c は a に嫌われたことを知る(Wac|c < 0)。しかし、c は一貫して a のことを大切に思っている(Wca|c > 0)から、c のイメージするバランスは図10のようになる。バランス理論の観点(Wca|c > 0、Wcb|c < 0、Wab|c < 0)では安定した状態だが、好意の返報性の観点(Wca|c > 0、Wac|c < 0)では辛い状態になる。a に対して好意を示しても示しても(ΔWca|c > 0)、返ってくるのは嫌悪の情ばかり(ΔWac|c < 0)になる。
 a のことを嫌いになれば、返報性の観点(Wca|c < 0、Wac|c < 0)では良いが、バランス理論の観点(Wca|c < 0、Wcb|c < 0、Wab|c < 0)では不安定な状態になる。だからといって b のことを好き(Wcb|c > 0)になることはできず…。
 a から見れば、助けてくれなかった c を嫌いになって新しい安定状態に移る構図だが、c から見れば、a を助けなかったことで好意の返報性が成立しなくなるかバランスが悪くストレスを感じる状態に変化してしまう構図である。

 冒頭の例のように a、b、c は何でも良い。「社会」のような抽象的な対象でも良い。期待を裏切られた思いは強く、いったんバランスが安定してしまうと変化しにくい。ただ、その安定は他者の好悪感情を誤って認識していることによるものだから、その誤りに気付いてもらえれば再びバランスの崩れた不安定な状態になり、誤解のない新しい安定状態に変化する可能性がある。


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カテゴリー:疑似ソシオン理論

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