趣味の合う人は好きで合わない人は嫌い
好きな人が好きなものは好きになり(図1)、好きな人が嫌いなものは嫌いになる(図2)。嫌いな人が好きなものは嫌いになり(図3)、嫌いな人が嫌いなものは好きになる(図4)。それがハイダーのバランス理論の通常の使い方だろう。
図1~図4は次のように見ることもできる。
私が好きなものを好きだから好きになり(図1)、私が嫌いなものを嫌いだから好きになる(図2)。私が嫌いなものを好きだから嫌いになり(図3)、私が好きなものを嫌いだから嫌いになる(図4)。
どちらも同じ図だが、好きになったり嫌いになったりする順番が違う。前者は好きな人や嫌いな人の態度によって自分の趣味を変えているのに対し、後者は自分の趣味と同じか否かで相手に対する態度を決めている。
図 | 解釈 | 前提 | 観察 | 結論 |
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図1
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好きな人が好きなものは好き | Wab|a > 0 | Wbc|a > 0 | Wac|a > 0 |
私が好きなものを好きだから好き | Wac|a > 0 | Wbc|a > 0 | Wab|a > 0 | |
図2
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好きな人が嫌いなものは嫌い | Wab|a > 0 | Wbc|a < 0 | Wac|a < 0 |
私が嫌いなものを嫌いだから好き | Wac|a < 0 | Wbc|a < 0 | Wab|a > 0 | |
図3
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嫌いな人が好きなものは嫌い | Wab|a < 0 | Wbc|a > 0 | Wac|a < 0 |
私が嫌いなものを好きだから嫌い | Wac|a < 0 | Wbc|a > 0 | Wab|a < 0 | |
図4
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嫌いな人が嫌いなものは好き | Wab|a < 0 | Wbc|a < 0 | Wac|a > 0 |
私が好きなものを嫌いだから嫌い | Wac|a > 0 | Wbc|a < 0 | Wab|a < 0 |
図1は「私の好きな人に私の好きなものを好きになってほしい」という願望のようにも解釈できるし、「私の好きな人が私の好きなものを好きになった」という他者の態度決定のようにも解釈できる。図2~図4も同様に解釈できる。しかし、他者の行為を結論の位置に持ってくる場合は、他者にとってのバランスを考察するべきだろう。例えば、図1で b が c を好きになった(Wbc|a > 0、Wbc|b > 0)のは、a が b を好きで(Wab|a > 0、Wab|b > 0)、かつ a が c を好きだった(Wac|a > 0、Wac|b > 0)からではなく、b が a を好きで(Wba|b > 0)、かつ a が c を好きだった(Wac|b > 0)からであると解釈した方が自然だろう。なぜならば、ハイダーのバランス理論では、a が b を好き(Wab|a > 0、Wab|b > 0)でも、b が a を嫌って(Wba|b < 0)いれば、すなわち好意の返報性(Wab|b > 0、Wba|b > 0)が成立しなければ、b が c を好きになる結論(Wbc|b > 0)は生じないからである。
参考のため、a の願望( b に選択してほしい態度)が満たされる条件を b にとってのバランスで図示した場合にどうなるかを図5~図8に示しておく。
a の願望(Wbcの所) | b にとってのバランス |
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図1
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図5
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図2
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図6
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図3
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図7
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図4
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図8
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