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責任転嫁の構図

 相手に好かれるために、あるいは相手に嫌われないようにするために自分の態度を決める仕組みはハイダーのバランス理論で説明できるが、通常は相手の好みに合わせて自分の好みを偽る(参照)。それとは異なり、自分の好みに相手が合わせるように誘導して嫌われないようにすることがある。その一つが責任転嫁である。自分が非難されそうになると、別の人の悪口を言って相手の非難を別の人に向けさせる。そのことによって自分への非難を免れようとする行為である。
 ここでは、その責任転嫁の仕組みをハイダーのバランス理論を使って確認する。

図1 図2 図3
図1 図2 図3

 a にとってのバランスは考えない。a が b からの非難を避けようとして b にとってのバランスをどのようにイメージしているかについて考える。
 初期状態は b は a に対して好意的(Wba|b|a > 0)で c に対しても好意的(Wbc|b|a > 0)に思われたとする(図1)。a は何かで失敗した時に b に責められる(ΔWba|b|a < 0)のではないかと恐れる(図2)。そこで a は c を非難し始める(ΔWac|a < 0)。これで、b には a が c を非難している(ΔWac|b|a < 0)ことが伝わる(図3)。
 この図3の状態は b にとってバランスの良い状態で、a が c を非難すればするほど、b は a を嫌うかもしれない。
 ところが、a の c を責める意見に説得力があると、様子が変わってくる。

図4 図5
図4 図5

 c を非難する a の意見に説得力があり頷けるようになると、b は c も非難(ΔWbc|b|a < 0)するようになる(図4)。図4の状態は b にとってバランスが悪い。c に対する a の非難が無くならなければ、b は a か c かどちらかの非難を止めなければいけない。a の意見の説得力しだいであるが、図3に戻らずに図5の状態になれば、a の責任転嫁作戦は成功である。b は a を責めなくなる。

 この流れは自分の責任を他の人になすりつけるときに見られることが多いのだが、全く関係ないことで別の人を非難して、自分に向けられた非難を逸らそうとする人もいる。自分の悪口を言われそうになったら他の人の悪口を言い始めて、自分の悪口を言いそうだった人に一緒にその人の悪口を言ってもらおうとする。そんな人もいる。ハイダーのバランス理論によれば共通の敵を作れば仲良くなれることになるが、意図的に共通の敵を作って自分が攻撃されないようにする仕組みである。
 苛めの対象が変わるときも同じ仕組みになっていることがありそうである。自分が苛められていたときに新たな苛めのターゲットを用意して自分が苛める。それで上の図3のように安定してしまって自分への虐めが続くかもしれないが、新しい方が苛めがいがあるとターゲットがそちらに移り、自分も一緒に苛めることで自分は苛められなくなる。もしかしたら、そんなこともあるかもしれない。

 この非難を別の人に向けさせて自分への非難を免れようとする手段は、成功することがあるかもしれないが、失敗することも多いような気がする。例えば、「責任転嫁」は「責任転嫁」だと感じられたら逆に非難させることが多いような気がする。それも、ハイダーのバランス理論で説明できる。

図6
図6

 b が「責任転嫁」という行為 c を嫌って(Wbc|b < 0)いた場合、a が責任転嫁をすることで「 a は責任転嫁に好意的だ」とみなされる(Wac|b > 0)。すると、ハイダーのバランス理論により「自分の嫌いなものを好きな人は嫌い」ということで、b は a を嫌う(Wba|b < 0)ことになる。
 「責任転嫁」に限らず、自分が非難されそうなときに別の人を非難する行為は嫌われることが多いような気がするので注意が必要である。


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カテゴリー:疑似ソシオン理論

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